なぜモノベースではダメなのか

顧客はドリルが欲しいのではない、穴をあけたいのだ、といった認識の乖離の話は何度も聞かされている。ではなぜそうした事態が改まらないのか。

結局はコミュニケーションを前提としているか否かで大別できる話だろう。要するに「提供」と称して受け渡してクロージングだとみなすか、それとも提供の先にある相手の行動までキャッチアップしているか。

別の観点からいえば、不特定多数の顧客をグロスとして見ているか、それとも特定個人に焦点を当て、相手の顔が見えているのか。

コミュニケーションとの表現だけなら、単に耳障りの良いきれいごとであって、実際には見通しのききづらい面倒な領域である。しかしながら、その面倒さこそ意味があると思えるかどうかで成否は決するのかもしれない。

それなら問題解決までフォローすればいいんだろうといわれるかもしれないが、やはりそれでも足りないところがさらにややこしい。問題を解決しただけではマイナスをゼロに戻せても、プラスにはならないのだ。

このプラスには人間の感情の領域が絡んでくるので、さらに高度な領域だ。単によかっただけでなく、アメージング!!みたいな領域だ。相手に代わって満たすのではなく、相手を巻き込んでくる感覚だ。ここまでくると、無機的なモノにもはや意味がないのは必然だろう。

結局コミュニケーションにはあえて領域侵犯することが求められる点で高度なのだ。この意図的な侵犯に踏み出せるか、覚悟が問われているゆえに皆尻込みしてしまうことが、結局なかなか具現できない理由である。

キャンダー氏は、「スタートアップの目的は顧客を見つけることであり、商品を作ることではない」「人は製品やサービスを買うのではなく、問題の解決策を買う」といった原則を掲げ、スタートアップ成功の秘訣を明かしている。

情報源: 新規事業を成功させるカギは「順序」にあった | イノベーション的発想を磨く | ダイヤモンド・オンライン

More from my site

  • 感情が持つリアリティ感情が持つリアリティ 科学万能の時代にあっては、感情などというあいまいなものは一段低くみられる傾向にあった。しかし、わかりやすい差別化が一巡した時代にあっては、あいまいという一見ネガティブな特性がかえって意味をもってくる。 リアリティとは実物としてそれがあるだけの話ではない。そこに自身を投影して一体的つながりを実感できるかどうか、それが問われている。ゆえに、その結節点をつくるものが感情なのだ […]
  • 戦略の本質戦略の本質 戦略経営においての戦略の意味するところは、これまで整理してきた内容に基づき改めて定義をしてみると次のようになります。 戦略の本質は、環境適応のあり方を明確にすることであると同時に、自己の経営構造を変革・創造することであるといえます。 もう少しつけ加えて言えば、戦略とは環境変化への創造的な適応であり、自己変革・創造の実現であるともいえます。 これは構造変革・ […]
  • インサイトとはインサイトとは なぜ今、インサイトが求められているのでしょうか。 一般的にはマーケティング領域で、顧客に対するインサイトといった取り上げ方が中心かもしれません。しかし『気づき』をより普遍的に捉えるならば、ビジネスの前提条件として軽視できない問題です。 環境が多様であるのと同様、私たちの感性も多様であって、何が正解で何が不正解かと単純に色分けできるものではありません。断定的なベスト […]